RAPID 意思決定とは?

寄稿者 Alicia Raeburn の顔写真Alicia Raeburn
2024年1月23日
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概要

RAPID とは、大きな決断を迫られたときに、チームに割り当てる役割の頭字語で、Recommend (提案)、Agree (同意)、Perform (実行)、Input (情報提供)、Decide (決定) からなります。RAPID を使い、各ステークホルダーに求めるフィードバックの種類を明確にすることで、それぞれの専門知識を最大限に活かした意思決定が可能になります。

職場で大きな決断を迫られた際に不安を感じるのはごく普通のことです。結局のところ、物事がどのような結果に行きつくのかは、ほとんど予測できないものです。幸いなことに、データに基づく意思決定フレームワークを用いて各意思決定における役割と責任範囲を明確に割り当てることで、こうした不安の軽減に役立ちます。

ここでは RAPID 意思決定を取り上げます。この意思決定モデルは、特定の役割にチームメンバーを割り当てるのに役立つフレームワークです。RAPID は、多くの関係者を巻き込んで規模の大きめな意思決定を行う際に特に有用です。これは、各関係者がどのようなフィードバックを提供すべきかを把握できるためです。RAPID とは 5 つの役割を示す頭字語であり、それぞれの役割は意思決定プロセスの異なる側面を担います。

RAPID 意思決定モデルとは?

Bain & Company が開発した RAPID 意思決定モデルは、意思決定プロセスにおいて従業員それぞれに主要な役割を割り当てるために使用されます。RAPID は、意思決定プロセスにおいて各従業員が担うさまざまな役割を示す頭字語であり、以下の 5 つの単語から成ります。

  • Recommend (提案)

  • Agree (同意)

  • Perform (実行)

  • Input (情報提供)

  • Decide (決定)

通常、頭字語の順番と意思決定プロセスの順番は一致しないため、注意が必要です。たとえば、「情報提供」を示す (I) は頭字語の 4 番目にきますが、大抵の意思決定プロセスでは最初に情報を収集する必要があります。また、RAPID の各役割を担当する人数も異なります。小規模なチームでは、同じメンバーが複数の役割を担うことがあります。規模が大きめな組織では、1 つの役割に完全特化したタイガーチームを結成する場合もあります。

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RAPID の活用場面

皮肉にも、RAPID フレームワークは「迅速 (英語で "Rapid")」なプロセスを意味するものではありません。その代わりに、RAPID モデルでは、たとえ少し時間がかかっても、慎重かつ正確に重要な意思決定の実施をサポートすることに焦点が当てられています。とはいえ、RAPID 意思決定は、まとまりのない意思決定プロセスと比較すると時間短縮につながる傾向があります。各関係者に役割や責任範囲を明確に割り当てることで、関係者がどのようなフィードバックを提供可能 (そして不可能) であるかを正確に伝えることができます。

RAPID は建設的で考え抜かれたプロセスですが、すべての問題に適用できるわけではありません。このプロセスは本質的に、関係者の意見を多く必要とする複雑な問題に適しています。

一般的に、次のような場合に RAPID を用いる必要はありません。

  • 単純な問題。

  • 急を要する意思決定。

  • 1 人で行うことができる意思決定。

記事: 意思決定プロセスを構成する 7 つの重要なステップ

RAPID 意思決定と RACI チャートの比較

RAPID と RACI はどちらも役割の決定に役立つフレームワークですが、役割が適応される場面が異なります。RACI チャートはプロジェクトの役割を決定するのに役立ちますが、RAPID の役割は通常、重要な意思決定を行うために割り当てられます。

  • RACI チャート: 特定のプロジェクトにおける意思決定の責任範囲を明確に示すことを目的として、プロジェクトの役割を定義するために使用します。一般的に、あらゆるタスク、マイルストーンプロジェクトの成果物に関するプロジェクトチームの役割や責任範囲を明らかにするために用いられます。

  • RAPID: 複雑な問題に関する意思決定を行うことを目的として、個人またはグループの役割を定義するために使用します。RAPID を用いる場面では、たくさんの関係者が関与し、多くの意見を必要とすることが多々あります。

たとえば、あるエンジニアが RACI チャートでは日々製品開発を担当していることが示されているとします。そのエンジニアは RAPID フレームワークによって一時的に採用担当グループに割り当てられる可能性があります。

RAPID 意思決定における 5 つの役割

RAPID の役割は、組織の意思決定を担当する個人またはグループに割り当てられます。1 人のメンバーに複数の役割を割り当てることも、1 つの役割に複数のメンバーを割り当てることも可能です。RAPID は柔軟性を発揮しながらも、優れた意思決定を優先するように体系化されています。

この構造は、RAPID の 5 つの役割を基盤としています。

1. 提案 (R)

提案者は、プロセスの進め方に大きな影響力を持つという点で、チームリーダーに類似しています。提案者の役割は、意思決定に直結する提案と実作業の多くを担当します。その影響力を考慮して、提案の役割は 1 人の個人またはタスクフォースで果たすことができます。

たとえば、ソフトウェアを更新するかどうかを決めようとしているとします。提案者は、新しいソフトウェアに関する提案を作成し、他の役割との調整を通じて関連情報を収集します。

2. 同意 (A)

同意の役割を任される人はかなりの権限を持っています。この役割では、提案者が可能な限り最適な意思決定を行えるようにサポートします。RAPID 意思決定プロセスにおいてはすべての関係者の意見が検討対象となることもありますが、最終決定においては同意者の意見を考慮に入れることが必須となります。すべての意思決定に同意の役割を割り当てる必要はなく、より専門性を要する場合にのみ適用します。

先の例に合わせるとするならば、同意者はエラーのない機能を実現するためのコードを正確に提示できるソフトウェア開発者に例えることができるでしょう。これに関しては交渉の余地はありません。バグのないソフトウェアを開発したいのであれば、開発者の意見を考慮する必要があるのです。

3. 実行 (P)

実行の役割では、いかなる意思決定も実行に移すという責任を果たします。この役割は意思決定プロセスの最終ステップですが、事前に割り当てる必要があります。そうすることで、実行者はすべての詳細情報を把握できます。これは複雑なプロセスにおいて重要になります。実際の出番が来る前に実行者を引き入れておくことで、アイデア出しから実装までの流れが円滑になります。

引き続き先ほどの例でいくと、実行者は実際に新しいソフトウェアを制作するソフトウェア開発者になるでしょう。もしくは、開発チームの責任者であり、最終的にソフトウェア設計を担うプロジェクトマネージャーが受け持つ場合もあります。

4. 情報提供 (I)

情報提供は RAPID の 4 番目に来る役割ですが、通常は最初に割り当てられます。一般的にこの役割は、専門スキルの習得者、関係者、そして意思決定によって影響を受けるメンバーなど、複数の人が担当します。情報提供者は、意思決定プロセス全体を通して考慮すべきあらゆる情報や助言を提供する責任を果たします。同意者と似ていますが、情報提供の役割には最終決定権がなく、単に情報を提示するだけです。

たとえば、プロジェクトマネージャーは情報を提供するチームに所属してさまざまな分析 (費用便益分析など) を行い、決定者に対してプロジェクトが実行可能であるかの判断材料を提供する場合があります。この場合、ソフトウェア開発者も、新しいソフトウェアの制作に何が必要とされるのかを示す技術的な関連情報を提供するために、情報提供チームに参加するかもしれません。

5. 決定 (D)

決定の役割とは、最終決定を下す人を指します。質の高い意思決定を行うために、決定者はプロジェクトの全側面に加え、あらゆる妥協点を理解し、意思決定がすべての関係者に与える影響について把握する必要があります。決定者は必ずしも自身の意見を共有する必要はありませんが、同意者によって提供された情報や意見を考慮しなければなりません。

先の例をまとめると、意思決定者は別のチーム (ソフトウェアチーム以外) のメンバーである可能性が高くなります。これは、すべての関連データを客観的に評価した上で、新しいソフトウェアを制作すべきかを決断できるようにするためです。決定者はリーダーである必要はありません。実際、チームリーダーや会社の経営幹部以外のメンバーを決定者の役割として割り当てることは、意思決定におけるバイアスを減らす上で有効なのです。

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RAPID の実施例

それでは、日々の業務における RAPID の活用例を見ていきましょう。たとえば、自分が製品の価格設定を担当するチームに所属していると仮定しましょう。価格設定は、収益、成長、ビジネスモデルの必然的な成功に影響を与える重大な決定事項です。商品価格が高すぎると、顧客を失うリスクがあります。しかし、反対に価格が低すぎると収益を確保できません。

適正価格の把握を目的として、RAPID を用いてデータや別の視点に基づき価格の決定をサポートしてくれる人々のグループを構築することができます。このようなかたちで RAPID を使用することで、さまざまなチーム、エキスパート、関係者をすべて意思決定に巻き込むことができます。反対に、RAPID を使用せずに価格設定を試みた場合、独断的な数字を提示して最大利益の獲得機会を失うどころか、潜在顧客を警戒させて逃してしまうといったさらに望ましくない事態を招く可能性があります。

RAPID を使うメリット

意思決定に RAPID を使用するメリットは、重要な意思決定にさまざまなステークホルダーが関与できることです。今後の方針決定を取締役会や CEO のみに依存せず、あらゆる階層のメンバーが発言権を持てます。

他にも、RAPID フレームワークは以下のことに役立ちます。

  • より多くの人々を、その人々に直接影響のある意思決定に関与させられる。これはチームメンバーの意見を聞かずに意思決定を行うよりも、よりメンバーのやる気を引き出せるリーダーシップの取り方です。

  • 意思決定プロセスの透明性が高まる。決定に同意できない場合も、誰に相談すればいいのか、どうすれば変更を加えられるのかが明確になります。

  • 組織内で権力を分散できる。常にトップの人々が意思決定を行うということがなくなります。

  • さまざまな視点の意見を取り入れられる。これによりさまざまな機会や課題が見つかります。RAPID がインクルーシブであればあるほど、より多くの考え方 (そして最終的には、多くの解決策) が集まります。

  • 組織内の全員に決定権を与えられる。そうすることで自分の仕事、役割、組織に対する責任感を高めることができます。

  • すべてのチームやメンバーに、意思決定に関する当事者意識を持たせられる。これにより、自分たちが会社の決定に与える影響を全員が感じられます。

気をつけるべきこと

RAPID を使った意思決定は便利で強力ですが、実施が難しい場合もあります。他の大きな変更を行うときと同様に、RAPID を初めて実施する際は、ある程度の反発を受ける可能性があります。そうした潜在的な課題を事前に把握し、計画を立てておくことで、スムーズな移行が実現します。

気をつけるべきことは以下のとおりです。

  • メンバー間の力関係: RAPID によって一部の人が他より強い権限を持っていることが強調され、対立が発生することがあります。これは必ずしも悪いことではありません。時には権限を割り当て直すことも必要です。しかし、あまり気持ちの良いことではないでしょう。RAPID の導入で対立が発生した場合は、問題の根本原因を突き止め、最終的にはチームの強化を目指す対立解決戦略を実践してみましょう。

  • 権限の快適性: 決定者の役割は楽しいかもしれません。その権限を手放し、意思決定を誰かに任せるのを嫌がる人もいます。正しい判断ができるのは自分だけなのではないかと心配していることも、決定を下す立場に慣れているだけの場合もあります。しかし RAPID では、偏見の少ない結果を得るためにも、普段は決定権を持たないような人々に判断を委ねた方が合理的です。

  • リーダーへの過度な依存: 意思決定はリーダーに頼ってしまいがちです。RAPID では、意思決定を行うのが経営幹部や取締役会だけにならないように、決定者の役割を持つ人を変えることを奨励しています。まずは、意思決定を行えるのはリーダーだけだと考える習慣を断ち切る必要があります。

迅速な結果よりも、RAPID な意思決定を

今日着るシャツを決めたいときは、目を閉じて指をさして決めてしまってもいいでしょう。しかし、ビジネスやチーム、仕事に長期的な影響を与えるような大きな決定を下すときは、RAPID を使うことで自分一人で下す決定よりも品質の高い、良い決断を下せます。

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複雑な意思決定には、複雑な思考が必要です。しかし、こうした考えやデータ、意見の整理は簡単であるべきです。Asana を使えば、影響の大きいすべての意思決定に関するコラボレーションや、RAPID の役割の割り当て、意思決定の進捗の確認などを、すべて一か所で行えます。

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