ポストモーテムとは?プロジェクトを改善する振り返り手法と実施ポイント

寄稿者 Sarah Laoyan の顔写真Sarah Laoyan
2025年6月27日
facebookx-twitterlinkedin
プロジェクトのポストモーテム会議を成功に導く 6 つのヒント記事バナー画像
テンプレートを表示
デモを見る

概要

プロジェクトが終わった後、何となく一区切りをつけて終わっていませんか?うまくいった点も、うまくいかなかった点も、次に活かす振り返りこそが、チームとプロジェクトを成長させるカギです。

そのために活用されているのが「ポストモーテム会議(postmortem)」です。これはプロジェクト終了後に、チームで成功や課題を洗い出し、今後のプロセス改善や再発防止に役立てる振り返りの場です。

この記事では、「ポストモーテムとは何か?」「実施するメリットや進め方のポイント」など、初めての方でもすぐに使える実践的な内容をわかりやすく解説します。

更新: この記事は、ポストモーテムと間違えやすい用語に関するさらに詳しい記述を含めて 2025年 6月に更新されました。

なお、本記事で紹介する「ポストモーテム」は、システム障害対応やインシデント対応のための技術的なポストモーテムとは異なり、ビジネスやプロジェクト運営におけるチームの振り返り会議を指します。

AI 活用ガイド: ゼロから構築する変革戦略

AI 導入の課題を克服し、責任をもって倫理的に AI ツールを活用しましょう。イノベーションの文化を築く方法をこのガイドでご紹介します。

ガイドをダウンロードする
AI 活用ガイド
【どなたでも参加可能】Asana イベント情報

Asana のイベントに参加して、プロジェクト管理や働き方改善、業務効率化に関する有益な情報を得ましょう。ツールを最大限効果的に使う方法も学ぶことができます。

Asana イベント

プロジェクトを終えることは、大きな達成です。でもそこで完結させてしまうのは、実はとてももったいないことです。

振り返りの時間を持つことで、チームの努力を称え、次の挑戦に向けたヒントを見つけることができます。

ポストモーテムとは?

「ポストモーテム (postmortem)」とは、直訳すれば「死後の」という意味を持つ言葉ですが、ビジネスの現場では「プロジェクトやシステム運用の事後検証」を指す専門用語として使われています。

もともとは、SRE (サイト信頼性エンジニアリング) の領域で使われてきた用語で、システム障害やデータ損失といったインシデントに対する原因分析や再発防止策をまとめた文書のことを意味します。たとえば、インパクトの大きな障害が発生した際に、

  • インシデントの内容と影響範囲

  • 解決までのアクション

  • 問題の根本原因と再発防止策 

といった情報を整理、共有するために活用されます。

こうした技術的な文脈に加え、「ポストモーテム」は近年、プロジェクトマネジメントの分野でも広く使われるようになっています。この場合は、プロジェクト完了後に、「成功した点」「改善すべき点」「今後に活かす学び」 をチームで振り返るための会議やプロセス全体を指します。

技術的なポストモーテムとの違い

ポストモーテムは、技術領域 (SRE、IT 運用など) とビジネス領域 (プロジェクト管理など) で使われる意味に違いがあります。以下のように整理できます。

項目

技術的なポストモーテム (SRE)

プロジェクトポストモーテム (PM)

主な対象

システム障害、サービスインシデント

プロジェクト完了後のチーム活動

実施目的

原因分析、再発防止

成功と失敗の整理、次回への改善

参加メンバー

インフラ / 運用チーム中心

プロジェクトメンバー全体

成果物

技術的なレポート、ドキュメント

振り返り議事録、改善アクション

この記事では、後者であるプロジェクトマネジメントにおけるポストモーテムを扱っています。


ポストモーテムの振り返りを最大限効率的に行いましょう。無料テンプレートの使い方と入手方法はこちらからご覧いただけます。

無料のポストモーテムの振り返り用テンプレート

プロジェクト完了後の振り返り「ポストモーテム会議」とは?

プロジェクトマネジメントの現場で広く行われる「ポストモーテム会議」とは、プロジェクト終了後にチームが一堂に会し、「成功した点」と「改善すべき点」 をじっくり振り返るための重要な機会です。

この会議は、単なる報告や反省会ではなく、チームの努力を称え合いながら、今後のプロセス改善や効率化につなげるための学びを共有する場として位置づけられています。

具体的には、以下のような目的で実施されます。

  • 成功要因の把握と再現

  • 課題の特定と改善策の検討

  • チームのコミュニケーション強化

  • 次回プロジェクトへの知見の蓄積

こうした振り返りを経ることで、チームのパフォーマンスが継続的に向上し、プロジェクト運営の質が高まっていきます。

ポストモーテムと間違えやすい用語

プロジェクトの振り返りや報告の場は、様々な名称や形式があります。ここでは特に混同されやすい用語について、目的やタイミングの違いをわかりやすく整理します。

ポストモーテムとプレモーテムの違い

ポストモーテム会議とプレモーテム会議の大きな違いは、会議が行われるタイミングです。

  • プレモーテム会議は、プロジェクトの始動前に実施され、失敗の可能性をチームで洗い出し、リスクを軽減するための予防的な会議。

  • 一方のポストモーテム会議は、プロジェクトの終了後に行われ、実際に起こったことを振り返り、成功点や課題を共有し次回に活かす回顧的な会議。

起こりうるリスクを事前に想定して、その影響をできるだけ抑えるための対策を考えておく「リスクヘッジ」に関しては『リスクヘッジとは?意味、進め方、スキル向上のポイントを解説』をご覧ください。

その他の類似用語との違い

用語

実施タイミング

主な目的

特徴

デブリーフィング

任務やプロジェクト終了時

状況報告、事実確認

軍事や医療などで使われる。客観的な記録が中心。

レトロスペクティブ

スプリント後 (アジャイル)

継続的改善、チームの成長

アジャイルプロジェクトにおける定例の振り返り会議。小規模・高頻度。

リキャップ (要約)

会議やプロジェクト後

要点の整理と共有

議事録や要約レポートの意味合いが強い。会議形式ではないことも。

最終確認会議

プロジェクト完了時

結果のまとめと整理

報告的な色合いが強く、振り返りより「締め」が目的。

教訓会議

プロジェクト終了時

学びの抽出と共有

PMBOK などで用いられる用語。体系的な知見の蓄積に重きを置く。

「ポストモーテム」は会議形式でチーム全体の学びに重きを置くのが特徴です。似た言葉でも、記録中心だったり、報告中心、改善中心など、アプローチが異なるため、目的に合わせて使い分けることが重要です。


ワークフローを構築することで、チーム間の認識のずれをなくし、スムーズな共同作業を実現します。Asana のワークフローは、毎日使うツールと連携して仕事を一元管理できるので、仕事の効率・生産性も向上します。

Asana でワークフローの可視化と構築を行う

ポストモーテム会議がもたらす 5 つの価値

ポストモーテム会議は、プロジェクトの終わりに行う振り返りの機会ですが、単なる報告会や反省会ではありません。プロジェクトマネジメントを行うプロジェクトマネージャーにとって、次のプロジェクトをより良くするための仕組みづくりとチームの強化に直結する、非常に価値の高いプロセスです。

ここでは、ポストモーテム会議を行うことで得られる主な価値をご紹介します。

1. 過去の経験から学び、再現性のある成功をつくる

完了したプロジェクトで、何がうまくいき、なぜうまくいったのかを明確にすることで、成功の再現性を高めることができます。逆に、課題があった場合はその原因を特定し、次に活かせる改善策をチームで共有できます。

アジャイルにおけるレトロスペクティブとの関係

アジャイル開発では、各スプリント終了ごとに「レトロスペクティブ (振り返り)」が行われます。このレトロスペクティブもポストモーテムの一種であり、継続的なプロセス改善の実践例といえます。ポストモーテム会議を定例的に行うことで、アジャイル的な思考を非アジャイルプロジェクトにも取り入れることができます。

類似するプロジェクトが定期的に発生するのであれば、過去のプロジェクトのプロセスをベースにしたテンプレートを作成するとよいでしょう。テンプレートがあれば、プロジェクトチームは、プロジェクト計画に含めるべきアクションアイテムや成果物が何かすぐわかります。

記事: より効果的なプロジェクト計画をわずか 7 つのステップで作成無料のアジャイル振り返り用テンプレート

2. リスクの軽減とプロセスの最適化につながる

プロジェクトが終了するたびに、同じような問題が繰り返されていると感じたことは、ありませんか?ポストモーテム会議は、そうした再発を防ぐための具体的な対策を見つけ出す機会でもあります。たとえば、次のような情報を共有することで、チームは将来的なトラブルを未然に防ぐことができます。

  • 納期遅延がなぜ起こったのか

  • コミュニケーションの齟齬がどのタイミングで発生したのか

さらに、反省点を踏まえたプロジェクトテンプレートを作成することで、同様のプロジェクトにすぐ再活用できる環境を整えることも可能です。テンプレート化によって、アクションアイテムや成果物が明確になり、プロジェクト計画がスムーズに進みます。

3. チームのコミュニケーションと信頼関係が深まる

ポストモーテム会議では、メンバーが自由に意見を出し合える雰囲気づくりが大切です。それぞれの経験や役割に基づいた振り返りを共有することで、メンバー間の相互理解が深まり、次のプロジェクトでの協力体制がより強固になります。

また、チームメンバーの視点や感情をマネージャーが客観的に受け止める場としても機能します。特に、課題に対して「誰のせいか」ではなく、「どうすればよかったか」「今後どう改善するか」に焦点を当てることが、前向きで建設的な対話につながります。

このようなコミュニケーションの場を定期的に持つことで、チーム全体の心理的安全性も高まり、プロジェクト成功への土台が築かれます。

4. メンバーの努力を称え、士気を高める

プロジェクト終了直後は、次の業務に急ぎがちですが、努力をきちんと評価し、称える時間を設けることが、チームの士気や一体感に大きく影響します。

ポストモーテム会議は、メンバーがどんな貢献をしたのかを共有し合い、「認められた」と感じる機会でもあります。たとえば、

  • 振り返り用テンプレートに「成功」セクションを追加し、プロジェクトの成果を明示する

  • チームメンバー同士で「賞賛の言葉」を送り合う時間を設ける

  • 会議前に成功点をまとめておき、全員に共有する

このような工夫が、成果への誇りや次の挑戦への意欲につながります。

記事: チームの士気が社員のパフォーマンスに与える影響

くり返し作業を自動化し、コミュニケーションの円滑化とコラボレーションの向上にも役立つ Asana は、無料トライアルですべての機能をお試しいただけます。

Asana でチームのコラボレーションを向上する方法

5. 組織のナレッジを蓄積し、改善文化を育てる

ポストモーテム会議で得られた知見を記録、共有することは、一時的な改善ではなく、組織全体の知的資産の蓄積に繋がります。特に複数のプロジェクトが並行して進むチームでは、ナレッジをドキュメントとして残すことで、新しいメンバーの育成やプロセスの継続的改善にも活かすことができます。

また、こうした振り返りを定例化することで、「失敗を責める」のではなく「改善の機会として捉える」風土が育ちます。このような改善文化が根付くことで、チームはより柔軟で強い組織へと成長していくのです。

より効率的な働き方へ

「もっと効率よくプロジェクトを進めたい」「無駄な作業をしている気がする」「チームメンバーの足並みが揃わない」 。そんな悩みを Asana のプロジェクトマネジメント機能で解決しましょう。まずは無料でお試しください。

Asana を無料で試す

成功するプロジェクトは、計画段階から始まっています。Asana のプロジェクト計画機能を使って、目的に沿った明確な計画を作成し、チーム全員が同じ目標に向かって動ける環境を整えましょう。

Asana でプロジェクトを計画する

ポストモーテム会議を成功に導く 6 つのヒント

ポストモーテムの実施は必ずしも複雑である必要はありません。ここでは、ポストモーテム会議を効果的に進め、価値ある振り返りの場にするための 6 つのヒントをご紹介します。

1. プロジェクト完了後、できるだけ早く会議を開く

ポストモーテムは、プロジェクトでの経験がチームメンバーの記憶に新しいうちに行うのが最も効果的です。記憶が新鮮なうちに振り返ることで、具体的な気づきや問題点を正確に把握できます。

プロジェクト開始時にポストモーテムの日時をあらかじめワークフローに組み込んでおくと、忘れずに実施できるためおすすめです。一般的には、プロジェクト完了から数日以内の実施が望ましいとされています。これにより、各メンバーが個別に振り返りを行う時間も確保しつつ、迅速にチームで共有できます。

2. 会議前にアンケートを配布し、意見を事前収集する

ポストモーテム会議の前に、チームメンバーにアンケートを実施して意見や感想を収集しましょう。こうすることで、複数のメンバーから指摘があった問題やテーマを特定し、会議の議題に優先的に取り上げることが可能です。

会議前アンケートの質問例:

  • 今回のプロジェクトで特にうまくいった点は何ですか?

  • 逆に、うまくいかなかった点や課題はどんなものがありましたか?

  • 次のプロジェクトに活かせる改善点があれば教えてください。

アンケート結果をもとに議題案を作成し、会議前にチームへ共有することで、メンバーが意識を整理して参加できるようになります。

3. ポストモーテム会議の議題を事前に共有する

ポストモーテム会議に限らず、会議の議題は必ず事前にチームに共有しましょう。前もって内容を知ることで、メンバーは重要なポイントを考えたり、発言の準備をすることができます。

議題の例:

  • 挨拶と導入 (2 分半)

  • 感謝表明 (5 分)

  • 首尾よく進んだ点について (5 分)

  • 改善の余地がある点について (5 分)

  • 次のプロジェクトへの提案 (5 分)

  • まとめ (2 分半)

このように準備をして実施することで、会議の流れがスムーズになり、全員が効率的に参加できるようになります。

記事: 会議を成功に導く 5 つのヒント無料ミーティング議題テンプレート

4. 書記と司会の担当者を事前に決める

円滑なポストモーテムの実施には、司会者と書記の役割分担が欠かせません。司会者は議論を促進し、話の脱線を防ぎながら議題に沿って進行します。一方、書記は議事録を正確に記録し、後のレポート作成に役立てます。

多くの場合、プロジェクトマネージャーが司会を担当し、他のメンバーが書記を務めますが、二人に分けることで進行が円滑になります。

オンライン会議の場合は録画もおすすめです。会議を欠席したメンバーのフォローや議事録の精度向上に役立ちます。

5. 会議の進行ルールを事前に決めておく

ポストモーテム会議は、自由に意見を出し合う場ですが、進行ルールを決めておくことで効率的に進められます。司会者は議題に沿って参加者の発言を促し、活発な議論を引き出すことが求められます。

話が停滞した場合の質問例を用意しておくと便利です。

  • プロジェクト計画で設定されたスケジュールを守るのに苦労していた人はいませんでしたか?思いあたらない場合、あなたにとって障害となったことはありましたか?

  • 設定した期限までにプロジェクトを完了させるのに十分なリソースがあったと思いますか?そう思わない場合、期限を守るために、他にどんなリソースが必要でしたか?

  • 今回の経験を振り返って、もしこのプロジェクトをやり直すとしたら、何を変えますか?

  • 類似するプロジェクトにまた取り組みたいと思いますか?そう思う、または、思わないのはなぜですか?

  • このプロジェクトは成功したと言えるでしょうか?そう思う、または、思わないのはなぜですか?

このような自由形式の質問から、プロセスの進行中に自分で気づくことがなかったプロジェクトのプロセスの一面が明らかになります。チームからのこのような見解を参考にして、次のプロジェクトに向けてよりよいプロセスを検討することができます。さらに有意義な会議にするためには、ファシリテーターを設けましょう。

無料のポストモーテムの振り返り用テンプレート

6. 会議後、出席者に要約レポートを配布する

ポストモーテム会議終了後は、主な議論内容と決定したアクションアイテムをまとめた要約レポートを作成し、出席者に配布しましょう。

このレポートは次のプロジェクトで実際に取り組むべき課題や改善策を明示し、メンバー全員の認識を揃える役割を果たします。アクションアイテムは具体的で実行可能なものにし、責任者や期限を明確にすることが重要です。

定期的にポストモーテムの結果を振り返りに活かすことで、チーム全体のプロセス改善が継続的に進みます。

まとめ: ポストモーテム会議を次のプロジェクトに役立てる

プロジェクトマネジメントにおけるポストモーテム会議について解説しました。そもそもポストモーテムの意味は何なのか、ポストモーテム会議を開くメリットにはどのようなものがあるのかを知り、今後のプロジェクト計画に役立てましょう。

プロジェクトのポストモーテム会議から学びを得たら、次のプロジェクトでは、プロジェクトの計画や、キックオフ会議の開催など、プロジェクトマネジメントに重要なスキルを身につけて、プロジェクトの成功に向けて段取りよく準備を進めましょう。 

プロジェクト管理スキルを磨く方法について詳しくご覧になりたい方は、Asana のプロジェクト管理リソースライブラリをお読みください。また、基本的な始末書の書き方についての記事『始末書の書き方をゼロからわかりやすく解説』もご覧いただけます。

ポストモーテムに関するよくある質問

関連リソース

記事

WBS とは?基本から作成手順、ツール活用まで徹底解説