業務の属人化とは?原因、リスク、解消法をわかりやすく解説 (事例付き)

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2025年7月19日
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概要

業務の属人化とは、特定の個人でしか対応できない業務や情報が存在し、その人が不在になると業務が停滞してしまう状態を指します。属人化は、組織全体の生産性や業務改善の妨げとなり、トラブルや引き継ぎの混乱を引き起こす要因にもなります。

この記事では、属人化の定義だけでなく、なぜ避けるべきなのか、属人化のリスクをまとめ、どのように解消できるのかをわかりやすく解説します。さらに、属人化を解消し、必要な情報や業務の進め方を見える化した事例もご紹介。属人化を防ぎ、組織全体で効率的に業務を進めるためのヒントが得られる内容です。

更新: この記事は、属人化を解消した事例に関する記述を含め、2025年 7月に更新されました。

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特定の人にしか対応できない仕事、つまり「属人化している業務」に心当たりはありませんか?

情報共有が不十分なために業務の内容がその人に依存し、誰かが抜けるとその業務の停滞が発生してしまう状況。それが、「属人化」です。こうした属人化は、働き方改革や業務改善の障害になるだけでなく、協力や改善を促すべき組織文化にも悪影響を及ぼしかねません。

この記事を読んで、属人化が引き起こすリスクを理解し、その解消方法を知りましょう。

属人化とは

ビジネスシーンにおける「属人化」とは、特定の業務やタスクの詳細、進め方、ノウハウ、さらには専門知識や暗黙知 (言語化しづらい経験や勘) などを担当者だけが把握している状態を指します。

例えば、あるタスクについて「それについては〇〇さんしかわからない」と言われたことや、自分がそう答えた経験はありませんか?このような状況こそが、まさに業務の属人化が発生している証拠です。

属人化が進むと、進捗状況の把握が難しくなり、チーム全体での業務の可視化が阻害されます。結果として、属人化した業務は属人依存によるミスや抜け漏れを招き、業務品質の低下にもつながるリスクも出てくるのです。また、形式知 (文書化や共有可能な知識) として整理されていない情報が多いため、担当者が変わるたびに同じ苦労を繰り返すことにもなりかねません。


こうした課題を解決するには、業務の透明化と効率的な情報の共有が不可欠です。

ワークマネジメントツール Asana なら、特定の業務の進捗状況をリアルタイムで共有し、業務の可視化を促進。これにより属人化を解消し、チーム全体で業務をスムーズに進められる環境づくりが可能になります。

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属人化とスペシャリストの違いとは?

属人化とよく間違われやすいのが、スペシャリストです。スペシャリスト (専門家) は、特定の業務において、専門性を持つ人物を指します。

「この仕事は〇〇さんにしかできない」という状況ならば、それが属人化されている状況であるからなのか、それとも高い専門性があるスペシャリストが関わる仕事だからなのか、判断しづらいと思うかもしれません。

しかし、属人化とスペシャリストには大きな違いがあります。それは、業務の属人化が起こっている状況には「専門性」がないという点です。見極めるためには、まず業務が可視化されているかどうかを確認しましょう。スペシャリストの関わる仕事は、業務自体、またはそのプロセスの可視化が可能で、他のメンバーともしっかりと共有されています。一方、属人化のほうは、業務の実態が見えづらく、それを明確にしたら実は業務の専門性は低かったということも少なくありません。

業務の属人化の具体例

属人化という言葉だけではピンと来ない方も多いかもしれません。ここでは、実際の業務でよく見られる「属人化した業務」の具体例を紹介します。特に組織の根幹を支えるバックオフィス業務での属人化は、組織全体に悪影響を及ぼすことも少なくありません。

  • 経理や請求業務: 経理担当者が特定の請求書の処理方法や支払いスケジュールを独自に管理している場合、担当者が不在だと支払い遅延や誤処理が発生しやすくなります。これが属人化した業務の典型例です。

  • 顧客対応や問い合わせ対応: 特定の顧客対応を特定社員が一手に引き受けていると、その社員が休暇や退職で不在時に対応が滞り、顧客満足度の低下につながります。

  • 社内システムの管理や設定: システム管理者が属人的に設定やトラブル対応を行っていると、引き継ぎが不十分になり、問題解決が遅れることがあります。

  • プロジェクトの進行管理: プロジェクトの進捗状況を一人の担当者が独占して共有しないケース。チームメンバーが全体の状況を把握できず、協力がうまくいかなくなることがあります。

これらの例のように、属人化した業務は業務の透明性を失わせ、組織の効率低下や悪影響を招くことが少なくありません。属人化を防ぐためには、業務の見える化やナレッジ共有の徹底が不可欠です。

記事: 見える化とは?意味、重要性、適切に実施するコツ、注意点を解説仕事を標準化するために企業全体で使えるテンプレートを紹介

属人化の原因:属人化はなぜ起こるのか?

では、そもそも業務の属人化とはなぜ起こるのでしょうか?属人化の原因をまとめます。

人材が不足している

まずは、人材不足の問題です。専門性の高い業務、たとえば研究開発といった部門と違い、総務や経理といった部門では、少数のメンバーで回しているところも少なくありません。こういった人手不足な状況では、たとえ小さなルールでも当人しか知り得ないという状況に陥るので、その結果業務は属人化する傾向にあります。そのルールを把握していなければ、業務フローはスムーズに進まなくなるのです。

業務に追われている

二つ目の原因は、業務過多です。各メンバーが多くの業務を担当し、余裕がない場合は、目の前の仕事をこなすことが精一杯で、業務効率化や標準化にまで気が回らないでしょう。その結果、ひとつの業務をひとりの担当者が常に担当することになるので、業務が個人に依存する状況になるのです。

記事: 業務の効率を改善する方法

属人化を解消するメリットがない

属人化には多くのデメリットがあり、一般的には解消すべきと言われます。しかし実際のビジネスシーンでは、特定のメンバーが特定のタスクを常にこなすことで、個人のスキルアップにつながったり、能力を上司やマネージャーから認められ評価されたりとメリットが目立つ場合も多いのもたしかです。そうなると、属人化解消の必要性を感じなくなり、属人化に拍車がかかることとなります。

仕組みが構築されていない

業務の属人化を解消し、知識やスキル、進め方、業務内容などの情報をメンバー間で効果的に共有するには、それだけの仕組みや体制が構築されていることが前提となります。それは、一斉メールでドキュメントを共有することではありません。常に全員の目に留まるところに業務マニュアルなど業務の標準化のためのツールがないと、メンバーは結局自分のやり方に頼ることが増え、属人化は解消しません。適切なガイドラインやシステムの導入が不可欠となります。

記事: 案件管理とは?効率的に行うために必要なツール導入のヒント

属人化が引き起こすリスク

業務の属人化が進んでしまうと、組織としてはデメリットとなるポイントがいくつかあります。一般的に「脱・属人化」がうたわれるのはこのためで、できるだけ業務フローやプロセスを見える化し、ひとつの業務が特定のメンバーに依存するのを避ける傾向にあります。

では具体的に、仕事で属人化が進行したときの問題点とはどのようなものでしょうか?属人化のデメリットをいくつか考えてみましょう。

担当者の負担が増える

特定のメンバーに完全に依存している業務がある場合、このメンバーの負担は増大します。代わりがいない状態なので、長時間労働が強いられるケースも発生するでしょう。

ボトルネックが生じる

業務の属人化が進むと、特定の担当者のスケジュールやスキルに依存してしまい、業務プロセスにボトルネックが生じてしまう可能性があります。その結果、そのメンバーの稼働状況が全体のプロセスや他のメンバーのタスクにまで影響を及ぼしてしまうリスクとなりかねません。そのような状況に陥ってしまうと、効率が低下し、迅速な業務遂行が困難となります。

顧客やニーズに対応できない

ひとつの業務を特定の従業員の知識や能力に完全に依存した状況を作っていると、その担当者が不在の場合に、顧客やユーザー、または市場の変化に十分に対応できなくなります。とくに顧客のニーズへの対応は迅速に行うべきですが、業務の属人化はそのスピードを遅らせ、結果的に市場での競争力低下を招く事態にもなり得ります。

製品やサービスの品質に差が生じる

属人化が発生している状況では、製品やサービスの品質に差が出てしまう場合もあります。成果物の品質がメンバーのスキルや知識に左右されていては、一貫性を保つこともできなくなり、品質管理の面でも支障をきたすことになります。こういった状況を改善しないままでいると、最終的には顧客満足度がさがったり、ブランドイメージの損傷が懸念されることになりかねません。

記事: 顧客管理: 新しい顧客を惹きつけ、満足度を維持する方法

引き継ぎがスムーズにいかない

個々の業務が特定のメンバーに完全に依存していると、その人物が異動したり、退職や産休や育休などで長期的にチームから離脱する場合、もしくはケガなど不測の事態で突如離脱する場合の引き継ぎが複雑になります。業務がしっかりと見える化された状態ならば、引き継ぎは決して難しい作業ではありません。しかし、属人化が進んでしまっている状態では、そのプロセスはなかなか進まず、スムーズに業務を引き継ぐことができなくなります。

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属人化がメリットとなるケース

企業が事業を進める上で「脱・属人化」は一般的に進めるべき対策ですが、業務の属人化にメリットがないわけではありません。リスクとデメリットを知ると同時に、メリットも把握し、属人化への知識を深めましょう。

個人のスキルアップにつながる

特定の業務をひとりで担当するため、その業務に関する知識や能力が高まり、結果的に個人メンバーのスキルアップにつながります。それは将来的に、メンバーのパフォーマンス向上と成長ももたらしてくれるため、利点であると言えるでしょう。

効果的なソリューションを提供できる

属人化は品質管理や工数管理の面でトラブルを起こす可能性のある事態ですが、視点を変えてみると、顧客のニーズにフレキシブルかつ効果的に対応できる可能性もあります。先にも述べたように、業務の属人化はその担当メンバーの個人スキルを向上させ、その結果成果物の品質も高めます。こういったメンバーが育ってくると、さまざまな顧客のニーズにも柔軟性を持って的確に対応できるケースも増えることになります。

会社の信頼度がアップする

上記 2 点の結果とも言えますが、属人化が進み、質の高い製品やサービスが提供できるようになると、ブランドイメージが向上し、会社の信頼度も上がります。「この業務は〇〇さんがいるから安心」や「〇〇さんが担当だから御社と契約する」など、社内外から評価されることもあるでしょう。

記事: アウトソーシング業務を正しく管理する方法
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属人化を解消するには?ヒントと対策

スムーズな業務の遂行に支障をきたしてしまう属人化。解消するためには、どのような対策を講じればいいのでしょうか。ここでは、属人化に対して行うべき取り組みとヒントをご紹介します。

① 業務全体を見える化する

まずは、業務全体を見える化することから始めましょう。どんな業務があって、誰が、どのようなスケジュールで行っているのかを明確に可視化します。細かく確認していくときに、簡略化できる工程や最適化できる箇所はないかもチェックしましょう。

業務の見える化に特化したプロジェクト管理ツールなら、効率的に業務フローを共有し、個々の担当者による依存を減少させながらコラボレーションを促進できます。


ワークフローを構築することで、チーム間の認識のずれをなくし、スムーズな共同作業を実現します。Asana のワークフローは、毎日使うツールと連携して仕事を一元管理できるので、仕事の効率・生産性も向上します。

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② 業務をマニュアル化し、全員で共有できる状態にする

属人化の大きな要因のひとつは、「業務のやり方が担当者の頭の中にしかない」ことです。これを防ぐには、マニュアルの作成 (マニュアル化) が効果的です。業務ごとの手順書を作成し、誰が見ても同じように対応できる状態をつくることで、業務が標準化され、担当者が変わっても業務品質を維持できます。

ただし、マニュアル作成はそれ自体がゴールではありません。作成したマニュアルを効果的に共有し、日常的に参照および活用される環境を整えることが重要です。Asana のようなツールにマニュアルや手順書をタスク単位で紐づけておくことで、業務の流れの中で自然に活用され、知識が組織に蓄積していきます。マニュアル化とその共有によって、「あの人に聞かないとわからない」という状況を減らし、属人化のリスクを根本から下げることができるのです。

③ ナレッジマネジメントを徹底する

属人化を解消するためには、組織内の知識、ノウハウを集約し、適切な方法で共有する仕組みが必要です。そこでナレッジマネジメントを徹底することで、各メンバーが持つ知識やスキルが組織全体で共有され、特定の担当者への依存が減ります。実用的なツールを活用して体系的にナレッジを蓄積し、それぞれが簡単にアクセスできる環境を整備しましょう。

さらに詳しくは、関連記事『効果的なナレッジベースを作成する方法』の記事をご覧ください。また Asana では、ナレッジマネジメントテンプレートを作成することもできます。

④ 継続的に見直しを行う

属人化の解消は、一度行ったら終わりというわけではありません。継続的にプロセスを見直し、改善できる点や修正が必要な部分があれば、その都度行いましょう。そのためにおすすめなのが、PDCA サイクルを回すことです。定期的に見直しを行い、属人化していない状況を維持するようにしましょう。

⑤ 効果的なワークマネジメントツールを導入する

仕事全体を可視化し効率的に管理するためには、ワークマネジメントツールの導入を検討してみましょう。

たとえば、チーム全体のタスク管理やコラボレーションをサポートするワークマネジメントツール「Asana」には、プロジェクト管理やスケジュール管理だけでなく、最適なコミュニケーション機能も含まれています。適切なツールを選定して導入プロセスを進めることができれば、仕事の効率性も向上し、属人化も克服できるでしょう。

属人化を脱却した組織の取り組み: クロスマーケティングの実例

マーケティングリサーチ事業を展開するクロスマーケティング株式会社では、事業部ごとに独自の業務フローが存在し、情報共有が不十分な状態が続いていました。「この案件の進捗は、〇〇さんに聞かないと分からない」といった状況が日常的に発生し、属人化した業務が組織全体の課題として浮上していたのです。

特に、プロジェクトごとのタスク管理が個人に依存していたため、業務の可視化が進まず、社内のコミュニケーションコストが高くなるなどの悪影響が出ていました。

Asana 導入による変化と解消された課題

そこで導入されたのが、Asana です。クロスマーケティングは Asana を全社で導入し、以下のような具体的な機能を活用することで、属人化の解消を進めました。

タスクのアサインと期限設定で「誰が、いつまでに、何をするか」を明確に

Asana では、すべてのタスクに担当者と期限を設定できます。これにより、業務が特定の個人に曖昧にひもづくことなく、チームで進捗状況をリアルタイムに共有できるようになりました。

プロジェクトテンプレートで業務を標準化および形式知化

従来は担当者の経験や感覚 (暗黙知) に頼っていた業務も、Asana のテンプレート機能を使って標準化 (形式知化) を実現しました。担当者が変わっても再現性のある業務設計が可能になり、「引き継げない」状態がなくなりました。

タイムラインビュー (ガントチャート) で全体の動きが見える

プロジェクト全体の流れや遅延ポイントが一目で把握できるようになり、「今どこで止まっているのか」が全員に共有される体制に。情報が担当者の中だけに閉じる属人化のリスクが減少しました。

コメントやファイル添付で情報をタスクに集約

会話や資料もタスクに紐づけて記録できるため、過去の対応履歴が見える化され、情報がチームに蓄積。後から参加したメンバーもスムーズにキャッチアップできるようになりました。

このように、Asana の導入によって、クロスマーケティングでは業務の見える化が一気に進み、属人化の解消だけでなく業務品質の向上と社内連携の強化を同時に実現しました。このツールが「情報のハブ」として機能することで、属人化の起きにくい組織文化の醸成も進んでいます。

あらゆる仕事の課題解決に、Asana。

仕事を最大限効率化し、チームの生産性を上げるためには、Asana のプロジェクトマネジメント機能をお試しください。日々の業務と目標をつなげ、「誰が・何を・いつまでに行うのか」を可視化します。

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まとめ: 属人化を解消して仕事をスムーズに進める

属人化の意味、メリット、デメリット、発生する原因や解消方法など、基礎知識をまとめました。

属人化は個々の経験やスキルに過度に依存し、業務のブラックボックス化を促進してしまう現象です。解消するためには、業務全体を見える化し、ナレッジマネジメントをしっかりと進めることが大切です。効果的なワークマネジメントツールを導入すれば、チームのコラボレーションも向上し、効率的かつ一貫性のある業務フローが実現するでしょう。属人化を解消することは、会社の持続的な成長と適応力向上につながる重要なステップであると言えます。

属人化に関するよくある質問

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