緊急事態や災害、システム障害などの予期せぬ事態が発生しても、事業を止めずに継続し、迅速に復旧するための計画、BCP (事業継続計画)。この記事では、BCP の意味や策定の目的、メリット、課題と注意点、作成の流れや実践ポイントまでを体系的に解説します。初めて策定する方はもちろん、既存の BCP を見直したい方にも役立つ内容で、実務で活用できるヒントや支援サービスの情報もご紹介します。
更新: この記事は、BCP の策定支援と実践例に関する記述を含めて 2025年 8月に更新されました。
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大地震や台風、サイバー攻撃、サプライチェーンの寸断。こうした事態は突然やってきます。事前の準備がなければ、事業は長期間止まり、顧客や取引先との信頼を失うかもしれません。
もし明日、オフィスや工場が使えなくなったら、あなたの会社は何日で復旧できるでしょうか?本記事では、そうした不測の事態に備えるための実践的な考え方と手順を紹介します。
BCP (Business Continuity Plan、事業継続計画) とは、大規模災害やシステム障害、テロ攻撃、パンデミックなどの緊急事態が発生した際に、企業が重要な事業を止めず、またはできる限り早く復旧させるための事前対策をまとめた計画書です。
災害発生時に取るべき初動対応や、従業員の安全確保、重要データのバックアップ、代替拠点や代替手段の確保など、具体的な危機管理手順が盛り込まれます。これらの準備は、事業停止による損失や信用失墜を最小限に抑えるために不可欠です。
日本は地震や台風、豪雨、火山噴火といった自然災害の多い国であり、特に製造業やサプライチェーン依存度の高い企業は被害の影響が長期化しやすい傾向にあります。近年では、新型コロナウイルス感染症や国際情勢の変化による物流停滞など、災害対策の枠を超えたリスクも顕在化しています。
こうした中、政府も事業継続ガイドラインや中小企業 BCP 策定運用指針を公開し、事業継続力強化計画の認定制度などで BCP の普及を後押ししています。東京都など自治体でも支援施策を行っており、BCP 策定は業種や規模を問わず企業の責務となりつつあります。
BCP は策定しただけでは機能しません。BCP 発動の判断基準や連絡体制、情報セキュリティ確保の手順を定期的に見直し、訓練を通じて社内に浸透させることが重要です。特に災害対応は現場ごとの状況判断が求められるため、実務に沿った柔軟な運用が欠かせません。
BCP は単なる文書ではなく、組織全体が危機に強くなるための仕組みです。Asana を活用すれば、BCP 策定から共有、発動時のタスク管理までを一元化し、緊急時にも迅速な対応が可能になります。テンプレートを活用して、効率的に策定および共有しましょう。
事業継続計画のテンプレートを試すBCP (事業継続計画) は、緊急時に企業が事業を継続するための重要な計画ですが、似た意味を持つ用語がいくつか存在します。特に BCM (事業継続マネジメント) やコンティンジェンシープランは、ニュースや業務マニュアルの中でも併用されやすく、混同されがちです。
これらの用語は目的や範囲、時間軸が異なり、混同すると計画策定や運用に支障をきたす恐れがあります。ここでは、それぞれの定義と BCP との明確な違いを整理します。
BCM (Business Continuity Management、事業継続マネジメント) は、BCP を策定、導入、運用、改善するためのマネジメントプロセス全体を指します。
簡単に言えば、BCM の成果物が BCP です。BCP が「文書」だとすると、BCM はその文書を作り、活用し、改善していく一連の活動です。不測の事態で通常業務ができなくなった際に、どの事業を優先するか、どの範囲から撤退するかを判断することは、単なる防災対策ではなく経営戦略の一部でもあります。
記事: 戦略管理は初めてですか? ここから始めましょう。コンティンジェンシープラン (Contingency plan) は、緊急時における各業務の対応手順を明確化する短期的な計画です。一方、BCP は緊急時でも重要な事業を継続し、中長期的に復旧を目指すための包括的な計画です。前者は「発生直後にどう動くか」に焦点を当て、後者は「事業を守り抜くためにどう立て直すか」に重きを置いています。
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BCP (事業継続計画) を策定する目的は、突発的な事態が発生しても、企業が優先すべき業務を止めずに継続するための行動指針を明確にすることです。事業が一時的に中断すると、売上だけでなく、顧客や取引先との信頼も失われる可能性があります。BCP は、その損失や混乱を最小限に抑えるための「備え」であり、経営資源のどこを守り、どこに再配置すべきかという判断を迅速に下すための基盤となります。また、平時からの訓練や情報共有を通じて、組織全体が同じ手順と優先順位で動ける体制を整えることも、BCP 策定の重要な目的のひとつです。
事業継続計画の策定や運用は、関係者との連携や進捗管理が鍵となります。
Asana なら、BCP の各タスクをチームで共有し、優先順位や期限を一元管理できるため、緊急時にもスムーズな対応が可能です。まずは Asana に無料登録して、あなたの会社の BCP 策定を効率的に進めてみませんか?
無料で Asana を試すBCP 対策をしっかり講じることで、企業は多くのメリットを享受できます。緊急時にも事業を停止することなく、製品やサービスを提供し続けることは、企業価値の向上に直結します。具体的には以下のような効果があります。
事業継続力が確保されている企業は、万が一のトラブルがあっても迅速に対応できるため、取引先や顧客からの信頼が高まります。信頼は長期的なビジネス関係の維持と発展に欠かせません。
災害やシステム障害などのリスクに対して備えていることは、競合他社との差別化要因になります。BCP 策定は企業のレジリエンス (復元力) を高め、危機管理体制が整っている証として投資家や取引先にも安心感を与えます。
BCP には従業員の安全確保や緊急時の役割分担も含まれるため、従業員が安心して働ける環境づくりに寄与します。また、平時からの訓練や共有を通じて、組織全体の連携力が高まることも大きなメリットです。
東京都をはじめ多くの自治体や国は、中小企業 BCP 策定運用指針などを示し、BCP を策定する企業を支援しています。BCP を整備している企業は助成金や優遇措置の対象となることもあり、法令遵守の観点でもメリットがあります。
自然災害に限らず、情報セキュリティの強化やデータのバックアップなども BCP の重要な要素です。これにより、企業活動の継続性が一層確保されます。
事業の付加価値を把握できる「バリューチェーン」という考え方についての記事『バリューチェーンとは?分析して競合他社との差別化を図る』もご覧ください。
緊急時や災害時でも事業を継続し、通常どおりに早期復旧できるよう練られる BCP ですが、具体的にはどのように策定していけばいいのでしょうか。ステップに沿って、解説します。
BCP を策定するには、まずその基本方針を定めます。たとえば「顧客への供給責任を果たす」や「従業員の人命を守る」などが基本方針の例として考えられます。BCP の基本方針を決定するときに重要なのが、それぞれの企業がその経営方針や事業戦略、ビジネス目標を今一度チェックすることです。企業の原点に戻り、基本方針を決定しましょう。
BCP 策定には専用のチームを設けることが一般的です。その場合は、複数の部署からメンバーを集めることが多いので、策定時にはコミュニケーションを円滑に進められる環境が望ましいでしょう。社内情報が可視化でき、同時にチームやタイムゾーンをまたいだコミュニケーションを可能にするツールがあると便利です。
平常時の業務をすべて実施することが不可能になった場合、企業はどの業務を優先して継続するか、または復旧させるかを的確に判断しなければなりません。そのためには、BCP 策定の時点でビジネスの中核となる事業または業務を選んでおくことが必要となります。中核となる事業とは、市場で最も競争力がある事業や最も売り上げの高い事業などのことを指します。
重要な業務を見極めるには、事業影響度分析 (BIA) を活用しましょう。優先的に継続もしくは復旧を必要とする業務を選んだら、目標復旧時間や、そのために必要となる経営資源も検討し設定しておきます。じっくりと検討し、緊急時に想定されるボトルネックの特定も行いましょう。
BCP 対策とは緊急事態に備えて策定する計画書であるわけですが、そもそも「緊急事態」が何なのか具体化していなければ、それ相応の対策も練ることができません。そこでこのステップでは、ビジネスの通常運営を困難にする事象 (インシデント) を明確化していきます。
インシデントには地震や火災などの災害から、事件、事故、戦争、システム障害などさまざまなタイプのものが考えられます。それをすべて挙げ、そのインシデントによるリスクを分析します。しかし、すべてのインシデントに対して BCP を対策として取るわけではなく、その中から最もリスクの高いものをピックアップしていきます。事業の優先順位を付けたのと同様、リスクにも優先順位をつけ、緊急時には何から取り掛からなければならないのかを明確に示すことが重要です。このステップの時点で、もしリスク登録簿がすでに社内シェアされていれば、よりスムーズに BCP 策定が進むはずです。
記事: リスクマネジメントの基本と 6 つのステップを徹底解説ステップ 2 と 3 を踏まえ、その対策を具体的に計画書に落とし込んでいきます。具体案の検討は、対象となる中核事業にどれほどのリソースが関わっているのかなど、ステップ 2 で特定した内容を考慮しながら取り組みます。想定される被害をどのように最小化するか、どのように早期復旧させるかを考え、そして事業運営に不可欠な要素が利用できない場合の代替案を具体的に BCP に落とし込んでいきましょう。個々のインシデントではどのような対応策を講じるのか、それぞれの場合について担当者や責任者も決め、細かく詰めていきます。
このとき、実際に該当する中核事業や業務がどのように運営されているのかを、BCP 策定チームは正確に把握していなければなりません。そのためには、社内のひとつひとつのプロジェクトやタスクが見える化されていれば効率的です。部署やチームの壁を越えた「見える化」が可能になるワークマネジメントツールが有効でしょう。
電子書籍をダウンロード: ワークマネジメントとは?チームがワークマネジメントを必要とする理由最後のステップで、BCP は社内で必ず共有しましょう。企業の上層部だけではなく、従業員ひとりひとりが BCP を把握していることが重要です。予測不能の事態が起こったとき、アクションを起こさなければならないのは企業のトップメンバーだけではありません。非常時にもスムーズに行動に移せるよう、現場で働く社員全員に BCP の普及が必須となります。シェアするときは、他のファイルに埋もれてしまうことがないよう、全員がいつでもアクセスできる場所で行うことがおすすめです。
BCP を策定する流れについてまとめましたが、そのときに考慮すべきポイントをいくつか挙げていきます。BCP を作るときの参考にしてみてください。
「災害によって停電した場合のために、自社での発電が可能となる太陽光発電の設備を整える」「地震によりサプライチェーンに乱れが出たことを想定して、仕入れ先や取引先の依存度を明確にし、代替策を準備しておく」。インシデントの種類や業種タイプによっても、BCP 対策はそれぞれ少しずつ違ってくるかもしれません。しかし、BCP 対策について考えるときに何よりもまず優先されるべきポイントは、人命を守ることです。従業員の命と安全を第一に考えてから、その他の BCP 対策を策定するようにしましょう。従業員の安否確認を速やかに行えるようマニュアルを作成したり、安否システムを事前に構築したりすることも大切です。
BCP は緊急事態が発生した場合にどのような対策をもって事業継続または復旧を目指すのかを述べた文書ですが、ボリュームも多く非常時には不便である可能性もあります。すぐに対応するためには、マニュアルのような簡易版 BCP を用意しておくとよいでしょう。
BCP は定期的に見直しをし、改善していく必要があることを忘れないでおきましょう。BCM に含まれる工程として、実際に従業員に対して訓練や教育を行うことも重要です。
BCP をメンテナンスする場合、その内容が複雑であったり引継ぎがうまくされないと、後任者が四苦八苦する可能性もあります。そうならないように、どのような手順で BCP が策定されたのかを後からでも閲覧できるツールを社内で使用していると便利です。メールやチャットツールとも連携できるAsana は、その点で有効なワークマネジメントツールと言えます。
また、働き方改革が進む中、昨今はコロナ禍の影響もあり、オフィスワークではなくリモートワークをする人も多いのが現状です。そんな中で BCP の策定もしくは改善、見直しをスムーズに行うには、オンラインでもチーム内コミュニケーションをスムーズに管理できるツールを使用しましょう。BCP が改定された場合も、関係者全員が最新版を常に手元に置くことが可能です。
仕事を最大限効率化し、チームの生産性を上げるためには、Asana のプロジェクトマネジメント機能をお試しください。日々の業務と目標をつなげ、「誰が・何を・いつまでに行うのか」を可視化します。
BCP の策定は企業にとって重要ですが、多くの場合、専門知識や経験が必要となるため、一人で取り組むのは大変です。そこで、多くの企業では外部の専門家による BCP 策定支援サービスを利用したり、効率的に計画を管理できるツールを導入したりしています。
専門家による支援サービスでは、災害対策や危機管理のノウハウを持つコンサルタントが、リスク分析から計画策定、訓練の実施までサポートします。自社の業種や規模に合わせた最適な BCP の作成を支援してくれるのが特徴です。
また、BCP 管理ツールを活用すると、策定した計画の見える化、社内共有、定期的な見直しがスムーズになります。特に Asana のようなワークマネジメントツールは、部署をまたいだチーム間の連携を強化し、災害発生時の初動対応から復旧までのプロセスを効率的に管理できるため、BCP 策定支援の強力な味方となります。
BCP は、企業の業種や規模に応じて様々な形で実践されています。ここでは、製造業やサービス業、中小企業での具体的な事例を紹介し、どのように BCP が役立つのかを見ていきましょう。
ある製造業の企業では、大規模災害で工場が被災した際に、事前に策定した BCP に基づき迅速に生産ラインの一部を別の拠点に移管。これにより生産停止期間を最小限に抑え、主要取引先への納品遅延を回避しました。さらに、データのバックアップ体制を整えていたため、システム障害からの復旧もスムーズに行えました。
飲食チェーンを展開する企業では、パンデミック発生時に BCP を発動。店舗の営業自粛に伴い、デリバリーやテイクアウトの体制を強化するとともに、従業員の安全確保を最優先にオンライン研修や安否確認システムを導入しました。この対応が顧客からの信頼維持とブランド価値向上につながりました。
東京都内の小規模 IT 企業は、中小企業 BCP 策定運用指針を参考に計画を策定。テレワーク環境の整備やサイバー攻撃を想定した情報セキュリティ強化を行い、実際にシステム障害が発生した際も、BCP に沿った初動対応で被害を最小限に抑えました。関係者間の連携に Asana を活用し、迅速な情報共有とタスク管理が可能となった点も成功要因です。
こうした実践例は、自社の BCP 策定や見直しのヒントになります。実際の運用を想定しながら、現場の状況に即した計画を立てることが重要です。
BCP とは何か、簡単にわかりやすくまとめました。策定時には紹介したポイントを考慮してみてください。BCP 対策とは、定期的かつ継続的な見直しと改善が必要です。不測の事態を前にしたとき、事業の継続を可能にし、また企業の信頼にもつながる文書ですので慎重に策定しましょう。
一方、具体性が求められる上、細かいところまで目を光らせなければならない BCP は、文書化すること自体が目的となってしまいがちです。BCP の目的とその意義を常に念頭に置き、実効性のある策定を心がけましょう。Asana では BCP のテンプレートを用意しているので、活用してみてください。
ビジネス戦略に関連して、昨今ますます注目が集まる DX や CSR などの活動、D2C に関する記事も Asana でご覧ください。