マーケティングは、ただビルボードや広告を使うというだけのものではありません。企業が自社の商品やサービスをターゲット市場に伝えるための戦略として使用されるものです。そうしたメッセージは、さまざまなマーケティング戦略を使って伝えることができます。この記事では、マーケティングとは何かを解説し、一般的に使用されるマーケティング 19 種類とそれぞれの用途についてまとめます。
更新: この記事は、マーケティング戦略を策定するためのフレームワークに関する記述を含めて 2024年 1月に改訂されました。
企業活動の基本中の基本、「マーケティング」。その意味をきちんと把握していますか?また、”マーケティングチーム” は製品やサービスの利点を一般社会に伝えるためにさまざまなマーケティング施策を行っていますが、最適な戦略とはどのようなものか、説明できますか?
もしマーケティングに関して少しでも疑問に思うことがあるなら、この記事を参照してみてください。ここでは、マーケティングに関する基礎知識をまとめ、今後のマーケティング計画で試行できる 19 種類のビジネスマーケティング戦略をご紹介します。
マーケティング戦略の無料テンプレート企業活動におけるマーケティングの重要性に、議論の余地はありません。マーケティング研究は進み、さまざまな種類のマーケティングが生まれていますが、まずはマーケティングとは何かを知り、その歴史や手法について理解しましょう。
日本マーケティング協会は、マーケティングの定義を「マーケティングとは、企業及び他の組織がグローバルな視野に立ち、顧客との相互理解を得ながら、公正な競争を通じて行う市場創造のための総合的活動である」としています。ここで言う「総合的活動」とは、リサーチやプロモーション、流通などにかかわる諸活動を指しています。
一方、米国マーケティング協会は、マーケティングの定義を「マーケティングとはお客様、クライアント、パートナー、そして社会全体にとって価値のある提供物を作成し、伝達し、提供し、交換するための活動、一連の制度、およびプロセス」として説明しています。
どちらの定義もとても広義なものであるため、イメージしにくいかもしれません。アメリカの経営学者フィリップ・コトラーは、マーケティングの定義を「マーケティングとは、標的市場を選択し、優れた価値の創造、伝達、提供を通じて、顧客を獲得、維持、育成する技術である」と論じています。
かみ砕いて言えば、マーケティングとは商品やサービスを顧客に届けるための仕組みを作るプロセスと考えられるでしょう。
現代マーケティングの世界はインターネットの普及やテクノロジーの拡大に合わせてどんどん広がってきました。顧客のニーズが変わり、そして発展するにつれ、企業が使用するマーケティング戦略も変化し、発展していきます。
ラジオで耳にする広告宣伝や、外で目にする広告看板がマーケティングのすべてではありません。マーケティングは、企業がオーディエンスとコミュニケーションを取り、ブランドを確立させるための手段でもあります。企業のマーケティング戦略は、反復的に行われるものであり、戦略はオーディエンスのニーズに合わせて変化していきます。
競合の分析はどうやるのか?競合他社と差別化するためのマーケティング戦略については、『競合分析のやり方を実例付きで解説』をごらんください。
マーケティングの主な活動内容は次のようになります。
新しい商品やサービスを企画する
市場調査をする
販売促進に向けた営業戦略を立てる
プロモーション企画を立てる
マーケティングは、19 世紀のアメリカで生まれた概念です。不良在庫を抱えずに経営をスムーズに行うにはどうすればいいのか、効率的に販売する方法を模索しはじめたのがはじまりだと言われます。時とともにマーケティングの考え方も変化し、現代マーケティングの概念が確立されたのは 1950 年代ですが、今もなお、時代が進むにつれてマーケティングも進化しています。
現在、企業が使用できるマーケティング手法は多岐に渡ります。最も効果的なマーケティング戦略は、慎重に市場調査を行い、ターゲットオーディエンスに関する理解を得た上で考案されたものです。一般的なマーケティング手法をご紹介します。
B2C マーケティングとは、"Business to Consumer" の略であり、ターゲットが製品やサービスを購入する直接的な消費者であることを意味します。製品の種類にもよりますが、B2C 製品のセールスサイクルはとても短く、顧客の意思決定プロセスもさほど複雑なものではありません。
私たちが目にする広告の多くは、B2C マーケティングの種類です。この手法の戦略には以下のようなものがあります。
キャンディーバーのテレビ広告
アパレルショップの Instagram 広告
ショップのダイレクトメールクーポン
B2B マーケティングとは、"Business to Business" の略で、企業のターゲットオーディエンスが他の企業であることを意味します。B2B マーケティングでは、B2C と比べると購入サイクルがかなり長くなることが一般的であり、顧客の要望とニーズを満たす上で極めて戦略的なアプローチがとられます。また、B2B における購入では、購入の意思が極めて強くなる傾向にあり、ターゲットオーディエンスは、最終製品を購入する前に細かく調査を行います。
B2B 戦略チャネルの多くは、デジタルです。従来のプラットフォームを活用する場合もありますが、一般的に B2B 戦略はデジタルチャネルで効果を発揮します。B2B マーケティングの例に、次のようなものがあります。
トレードショーのイベントマーケティング
インバウンドマーケティング戦略
顧客に合わせたマーケティングキャンペーン
19 世紀にマーケティングそのものが考案されて以来、数々の戦略が活用されてきました。従来のマーケティング戦略は目につきやすく、ターゲットが絞られていないことが多いのが特徴です。こちらは、これまで一般的に使用されてきた 10 種類のマーケティング戦略です。
アウトバウンドマーケティング
パーソナライズマーケティング
ダイレクトメール
パートナーマーケティング
テレマーケティング
PR マーケティング
口コミマーケティング
ステルスマーケティング
ブランドマーケティング
コーズマーケティング
以下、それぞれに具体例も挙げてひとつひとつ解説していきます。
マーケティング戦略が「アウトバウンド」と呼ばれる場合は、メッセージを伝達する方法に焦点が当てられています。アウトバウンドマーケティングとは、企業が顧客とメッセージを共有することです。ビルボード広告がこの例で、その目的は、車で通りかかる人々と特定の情報を共有することです。
パーソナライズドマーケティングとは、企業が過去のデータを用いて顧客のために体験をパーソナライズすることを言います。マーケティング資料に顧客の名前が使用されたダイレクトメールや、お客様が普段から購入している商品のクーポンやポイントを提供するスーパーマーケットなどがこの例です。
ダイレクトメールとは、企業が特定の住所に広告を送付することを言います。そうすることにより、企業は特定のエリアに的を絞ることができます。スーパーマーケットの週間広告は、ダイレクトメールのよい一例です。
パートナーマーケティングとは、2 つの企業が協力し合い、1 つのまとまったメッセージを作り上げるマーケティングです。よくある例として、企業間の資金提供などが挙げられます。たとえば、とあるカフェが Google の好意により Wi-Fi を無料で提供する場合などがこれにあたります。
テレマーケティングとは、企業が個人に直接電話をかけることを言います。これは、未だに使用されている手段ではありますが、携帯電話やナンバーディスプレイ (コーラー ID) が一般化したため、このマーケティング戦略が効果を発揮することは少なくなっています。
PR マーケティングとは、ニュースソースと提携してビジネスの評判を高める戦略のことです。PR マーケティングは、企業が新製品をリリースする、経営陣を大幅に入れ替える、事業の拡大を発表するときなどによく使用されます。
PR マーケティングは、製品の販売を直接促進することはないかもしれませんが、ビジネスのブランド知名度を高める上では有効な手段です。ビジネスバイヤーによっては、競争環境における対象企業の位置付けに関する知識を基に意思決定を行う場合があるため、この種のマーケティングは特に B2B マーケティングに関連します。
口コミマーケティングとは、自分のビジネスを既存の顧客が新しい顧客に紹介してくれることを頼りにするマーケティング戦略です。これは、顧客が手間のかかる作業を行ってくれることに依存するため、思うように進めるのは難しい戦略と言えます。
顧客に友人などを紹介してもらうために、事業を紹介してくれた際に割引やボーナスといったインセンティブを提供するという方法が一般的に使用されています。ヘアサロンやスポーツジムなど、クライアントベースの小規模ビジネスで使われるのがよく見られます。食事の配達サービスなど、サブスクリプションベースのサービスでも普及しつつあります。友人を紹介すると、紹介した本人と友人の両方に何らかの割引が与えられる場合があります。
ステルスマーケティングとは、宣伝と気づかれないように、製品やサービスを宣伝する行為のことです。よい一例として、映画やテレビ番組で特定の製品を使用する行為が挙げられます。ショーに登場する特定のキャラクターが一定の種類のパソコンしか使用しなかったり、一定の種類の車しか運転しなかったりする場合があります。これは、その企業がそうした製品をショーで使用してもらうためにお金を支払っているためです。
ブランドマーケティングとは、長期的なマーケティング手法で、認知度を高め、よい評判を築くことを目的とします。ビジュアルブランディングからトーンやボイスにいたるさまざまな要素が含まれます。
ブランドマーケティング戦略の効果を評価するために、企業はブランド知名度を追跡します。この指標により、一般人がそのブランドをどの程度知っているかを評価します。
コーズマーケティングとは、企業がブランドのコアバリューを強化する手段として特定のコーズ (社会的大義) を支援する戦略のことです。売上の 1% を地球の自然環境の回復と保護に充てると誓約する Patagonia 社がよい例です。
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デジタル形式で実施されるマーケティング戦略すべてがデジタルマーケティングに該当します。上述の戦略は、オフラインで行われる場合とデジタルで行われる場合がありますが、これから紹介する 7 種類のマーケティングはオンラインでのみ実施されます。
インバウンドマーケティング
検索エンジンマーケティング
コンテンツマーケティング
アフィリエイトマーケティング
SNS マーケティング
メールマーケティング
モバイルマーケティング
インバウンドマーケティングとは、メッセージを共有する代わりに、見込み顧客に自社を見つけてもらうための戦略です。長期的な戦略であり、見込み顧客にマーケティングファネルのステップを進んでもらうためのさまざまなデジタルマーケティング手法が実施されます。
インバウンドマーケティングでは、見込み顧客にブランドや企業について知ってもらい、頻繁にアクセスしてもらうために、検索エンジン最適化 (SEO) 戦略やコンテンツマーケティング、メールマーケティングが使用されます。
検索エンジンマーケティングとは、Google などの検索エンジンを活用する戦略です。クリック報酬型 (PPC) 広告やおすすめの記事など、有料広告も含まれます。また、Google の検索結果で上位表示されることを狙って最適化されたコンテンツを制作するといったオーガニック SEO 戦略も含まれます。
コンテンツマーケティングとは、電子書籍やウェビナーなど、見込み顧客に頻繁にブランドと接してもらうためのコンテンツを作成する戦略です。見込み顧客にメールアドレスなどの情報を提供してもらうことにより、企業が継続的に異なる手段を使って宣伝できるようにすることが、コンテンツマーケティングの狙いです。
アフィリエイトマーケティングとは、企業が外部ウェブサイトでの紹介により発生した売上に対してその外部ウェブサイトにコミッションを支払うという戦略です。一般的に、消費者のターゲット層を細かく絞りこむインフルエンサーマーケティングの戦略と組み合わせて活用されます。
SNS マーケティングとは、メッセージを共有する主なチャンネルとしてソーシャルメディアプラットフォームが使用する戦略です。有料広告やオーガニックコンテンツ、ユーザーが生成したコンテンツなどが該当します。e コマースビジネスでよく使用されます。
SNS はオウンドメディアの主要なチャネルのひとつですが、この SNS マーケティングは大きな話題を呼ぶことも多々あります。たとえば、第 47 回スーパーボウルの最中にブラックアウト (停電) が起きたとき、ナビスコ社のオレオのチームはその状況にぴったりのジョークを Twitter に投稿しました。このたった 1 件のツイートが、Oreo ブランドに注目が集まるきっかけを作ったのです。これは、低コストで顧客獲得を図るバイラルマーケティングとも呼ばれます。
記事: SNS コンテンツカレンダーを 6 つのステップで作成、管理するためのガイドメールマーケティングとは、電子メールを使って見込み顧客にマーケティングメッセージを送る戦略です。B2B と B2C マーケティング戦略の両方で使用され、ターゲット市場に狙いを定める最も効果的な手段の 1 つです。マーケティングメッセージを簡単に細分化できるのが大きなメリットの 1 つです。どのメッセージにどのオーディエンスがよく反応するのかを調べたい場合には、もってこいのマーケティング戦略といえます。
モバイルマーケティングとは、プッシュ通知やテキストメッセージを使ってマーケティングメッセージを送信する戦略です。この手段は、ユーザーにアプリを開いてもらい、アプリを毎日使用するユーザーの数を増やしたり、メールの場合と同様に割引付きのクーポンを共有したりするなど、さまざまな目標を達成するのに使用できます。この種のマーケティングには、顧客の電話番号が必要であり、その情報はメールアドレスよりも取得しにくいというデメリットがあります。
記事: Web マーケティングとはどんな仕事か?わかりやすく解説近年、イベントマーケティングは大きく変化しましたが、対面の場合でも、バーチャルの場合でも、相手に直接会うという戦略が極めて効果的なマーケティング戦略であることに変わりはありません。見込み顧客の記憶に残る体験を作り上げる上で便利なものを 2 つご紹介します。
体験型マーケティングとは、製品やサービスを宣伝するための取り組みとして、何らかの体験イベントを行うマーケティング活動のことです。個人を対象に没入型体験を演出できるかたちでテレビ番組や映画を宣伝する際によく使用される手法です。
体験型マーケティングのもう 1 つのよい例にポップアップイベントがあります。限定的なエンゲージメントであるため、イベント自体にある程度の緊迫感と特別な雰囲気があり、効果的です。
インタラクティブマーケティングとは、イベントや対面でのやり取りに何らかのインタラクティブな要素を伴うマーケティング戦略です。よく使われるテクニックの 1 つとして、賞金獲得を目指してルーレットを回したり、ビンゴ大会をしたりするなど、何らかのゲームが行われることが一般的です。トレードショーや他の対面イベントでよく見られます。
Asana のイベントマネージャー自身が、どのように Asana を活用して年間 200 個のグローバルイベントを企画しているのかをまとめた電子書籍です。
最後に、マーケティング戦略を立案するのに利用されるフレームワークを簡単にご紹介します。各フレームワークについては、それぞれの Asana 記事をご覧ください。
PEST 分析: 「政治 (Politics)」「経済 (Economy)」「社会文化 (Society and Culture)」「技術 (Technology)」に関する外部環境の変化を分析するフレームワーク
ファイブフォース分析: 業界の収益性に影響を与える 5 つの要因 (「新規参入の脅威」「業界内の競合」「売り手の交渉力」「買い手の交渉力」「代替品の脅威」) を分析するフレームワーク
3C 分析: 自社の現状を把握するために、Customer (顧客、市場)、Competitor (競合)、Company (自社) という 3 つの要素を分析するフレームワーク
SWOT 分析: 自社やプロジェクトの強み、弱み、機会、脅威を特定するために用いられるフレームワーク
STP 分析: 自社がターゲット層や商品・サービスの価値を明確にするために、セグメンテーション (Segmentation)、ターゲティング (Targeting)、ポジショニング (Positioning) の 3 つの要素を分析するフレームワーク
4P 分析: Product (製品戦略)、Price (価格戦略)、Place (流通戦略)、Promotion (販促戦略) という 4 つのマーケティングの基本となる要素を分析するフレームワーク
バリューチェーン分析: バリューチェーン (価値連鎖) を各事業別に分析するフレームワーク
マーケティングとは何かを解説し、その種類や手法をご紹介しました。ビジネスを成功に導く上で、マーケティング戦略は避けて通れません。効果的なマーケティング戦略を実施し、目標達成を目指しましょう。
マーケティングの重要性はわかっていても、さまざまなタイプのマーケティングキャンペーンを同時に実施するのは一筋縄ではいかないでしょう。マーケティング活動を効率的かつ効果的に管理するには、ワークマネジメントツールの使用がおすすめです。Asana を使ってマーケティングプロジェクトを管理しましょう。
マーケティングチーム向けの Asana を試す昨今ますます注目が集まる DX や CSR、D2C など、ビジネス戦略に関する他の記事もぜひ Asana でご覧ください。
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