企業目標を達成するには、目標そのものだけでなく、そこへ至るプロセスの管理が不可欠です。その鍵を握るのが、KPI (重要業績評価指標) です。そこで本記事では、KPI の意味や設定するメリット、効果的な設定方法、そして実際の成功事例を交えながら、目標達成につながる KPI 活用法をわかりやすく解説します。
「KPIって何?」「どうやって設定するのが正解?」「成果につながる管理方法は?」といった疑問を、この記事で解消しましょう。
更新: この記事は KPI を成功に導くヒントに関する記述を含めて、2025年 7月に更新されました。
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戦略目標を達成するには、ただゴールを掲げるだけでなく、その途中経過をどのように把握および管理するかが重要です。そこで活用されるのが「KPI」で、進捗状況を可視化し、確実に成果へと導くための基盤となります。
まずは KPI とは何か、その基本的な意味を理解しましょう。
KPI とは、戦略目標を実現するために、プロセスの進捗を測定するための中間目標数値です。日本語では「重要業績評価指標」とも呼ばれます。
つまり KPI とは簡単に言うと「最終的な目標を達成するまでにチェックすべき中間目標数値」です。たとえば、売上1000万円という戦略目標に対して、「月間の受注数」「問い合わせ件数」「リピート率」「既存顧客からの成約数」などをKPIとして設定すれば、進捗状況を具体的な数値で把握できます。
この KPI は、組織のトップ上層部から下層部まであらゆる場で使用されます。追跡したい指標により、組織全体の KPI やチーム別の KPI、そして個人用の KPI が設けられます。
KPI は、Key Performance Indicator の頭文字をとった略称です。KPI の日本語訳は「重要業績評価指標」です。KPI の読み方は「ケーピーアイ」です。
KPI をチームで管理するなら、Asana を活用しましょう。KPI は設定しただけで終わりではありません。進捗を「見える化」し、チームで共有、管理してこそ、戦略目標に近づけます。
Asana なら、KPI の設定から進捗の可視化、タスクとの連携までを一元管理できます。
効果的な目標を設定する方法KPI と並んでよく登場するのが、KGI です。KGI は Key Goal Indicator の頭文字をとったビジネス用語で、日本語では重要目標達成指標と呼ばれます。
KGI は、戦略目標の達成度を示す最終的な成果指標を指します。たとえば「売上目標 2 億円」が KGI です。この KGI達成のために、中間目標となる数値として「新規顧客獲得数 100 件」や「新規問い合わせ件数 1000 件」といった KPI を設定します。まず KGI を定め、そこに向けた KPI を設計することで、戦略的な進捗管理が可能になります。
OKR (Objectives and Key Results、目標と主要な結果) は、「目標 (Objective)」と、その達成度を測る「主要な結果 (Key Results)」で構成される目標管理フレームワークです。すなわち、ここでいう「目標」は達成目標を指し、「主要な結果」はその目標に向けた進捗状況を指します。OKR は目標を包括的に考えるために効果的な手法です。
OKR の内の KR (主要な結果) に最も類似するのが KPI です。ただ、KR は目標の測定対象が何であるかにより、定性的な KR と定量的な KR の双方があり得ます。それに対し、KPI は常に数値化が必要な点で異なります。
また、KPI が比較的長期で運用されるのに対し、OKR は四半期など短期のサイクルでの運用が一般的です。
記事: 目標と主要な結果 (OKR) とは?KPI の例: 2025 年度に NPS (ネットプロモータースコア) を 2 ポイント増加させる。
OKR の例:
目標: 顧客満足度とロイヤリティを高めるために、お客様に驚きと感動を提供する。
主要な結果: SNS やオンラインイベントを通じてクチコミを発生させる。
主要な結果: 顧客解約率を月 2% 未満にまで引き下げる。
主要な結果: 2021年度に NPS (ネットプロモータースコア) を 2 ポイント増加させる。
目標と主な結果 (OKR) を導入して目標設定を改善するための無料ガイド。適切な目標を設定し、会社全体で導入する方法を解説します。
CSF もまた、KPI と混同されやすいビジネス用語です。CSF (Critical Success Factor) の頭文字をとった略語で、日本語では重要成功要因と呼ばれます。これは、戦略的目標を果たすために組織が設定する全体目標 (全体的戦略目標) のことを指します。
CSF とほぼ同義で KFS (Key Factor for Success) や KSF (Key Success Factor) と呼ばれることもあります。
KPI は前述のとおり、KGI やビジネス目標達成へ向けた “達成度合い” を測る指標ですが、CSF は最終的な目標に到達するために達成すべき事柄を表します。また、CSF はあくまで目標なので、具体的内容が含まれているとは限りません。一方の KPI は測定可能な定量的指標です。この点が CSF とは大きく異なります。
KPI の例: 自社公式インスタグラムのフォロワー数 1 万人に到達する。
CSF の例: ブランド認知度を高める。
KPI には大きく分けて先行指標と遅行指標の 2 種類があります。
先行指標: 最終成果に先立って現れる数値で、日々の活動やプロセスを通じて影響を与えやすい指標です。
遅行指標: 最終的な成果として後から現れる数値で、結果を評価するのに有効ですが、改善のための即時対応は難しい傾向があります。
KPI は最終目標 (KGI) に向けた中間目標として設定されますが、KGI に近い KPI ほど、遅行指標であることが多い点には注意が必要です。
ブログマーケティングプロジェクトで KPI 設定をする例を考えてみましょう。ブログを活用したマーケティング施策では、次のような KPI が考えられます。
【先行指標 (プロセスに関する数値)】
投稿 1 件あたりの関連キーワード数
各投稿における外部サイトへのリンク数
記事構成のテンプレート利用率
投稿頻度や編集完了までのリードタイム
これらは記事公開前や直後に設定および改善できる指標で、施策の実行状況をリアルタイムで管理するのに役立ちます。
【遅行指標 (成果に関する数値)】
検索エンジンでのランキング
各投稿へのトラフィック
コンバージョン (製品、サービスを購入するユーザー数)
外部サイトからの被リンク数
こういった KPI は、記事投稿後に得られる数値なので、遅行指標です。遅れてついてくる数値なので、結果指標とも呼ばれています。
適切な KPI 設計では、先行指標で施策をコントロールしながら、遅行指標で成果を確認するという両輪のアプローチが重要です。
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KPI を設ける目的は、チームや個人の目標値と期限、そして成果を測定、管理する方法を明確にすることにあります。
では、KPI を適切に設定して運用することで、どのようなメリットが得られるのでしょうか?KPI には、以下のような重要な役割があります。
戦略目標の達成を促進する: KPI があることで、日々の行動が目標とつながりやすくなります。
リソース管理の意思決定材料となる: どの施策に注力すべきかが見えやすくなります。
測定可能で明確な評価基準を提供する: 「できている/できていない」を数値で判断できます。
管理可能な範囲の進捗と達成状況を追跡できる: チームで目標に向けて現実的なアクションが取れます。
指標と戦略目標を結びつけ、目標値の意識を強化する: 「なぜこの数値を追うのか」が明確になります。
プロジェクトが会社全体の目標にどう貢献するかを可視化する: チーム全員が自分の役割を理解しやすくなります。
KPI は、チーム内で共通の「ものさし (指標)」を持つことで、全員が同じ認識で行動をそろえる効果があります。また、KPI は定量的な評価基準を提供するため、客観的かつ公平な評価が可能になります。
こうした公平な評価は、チームメンバーのモチベーション向上や信頼感の醸成につながり、結果的にパフォーマンス向上にも寄与します。
毎日の仕事につながるチーム目標や企業目標は何かを明確にし、パフォーマンス向上を目指しましょう。Asana なら、各指標の達成度や達成状況を一目で把握し、チーム全体でシェアできます。
無料で Asana を試すKPI は、チームや個人が目指す数値目標を明確化し、進捗をリアルタイムで管理するための重要な仕組みです。ここでは、効果的な KPI を設定する方法を 4 つのステップに分けて詳しく解説します。
KPI を作成する前に、目指す目標を定義する必要があります。効果的な目標設定は、戦略計画を達成する上での主要な成功要因です。
戦略計画をまだ立てていない場合には策定し、組織の 3 か年目標、5 か年目標を定義しましょう。その上で、その計画を年間目標に小分けしましょう。チームのペースによっては、続けて 1 年ごとの KPI を設定するか、さらに半年ごとまたは四半期ごとの KPI に細分化できます。目標を定めるときは、マインドマップを作成すると効果的です。
記事: 戦略プランニングは初めてですか?ここから始めましょう。ビジネス目標を定義したら、その目標との関連性が高いビジネス評価指標はどれかを判断しましょう。たとえば、顧客数やコンバージョン率などが該当します。ここで選んだ指標が、後の KPI 候補となります。
何から始めればよいのか定かでない場合には、自社の各部門に関わりが深い指標を洗い出ししてみましょう。以下に部署ごとの具体例をまとめるので、参考にしてみてください。
分類 | KPI の例 |
---|---|
財務指標 | ・年間経常収益 (ARR) ・売上継続率 (NRR) ・売上高純利益率 (NPM) ・EBITDA (利払い前税引き前償却前利益) ・運転資本 ・キャッシュフロー |
顧客指標 | ・ネットプロモータースコア (NPS) ・顧客獲得単価 (CAC) ・顧客満足度 (CSAT) ・顧客維持率 ・顧客解約率 ・有料顧客数 ・新規ユーザー数 |
業務・工程指標 | ・サイクルタイムまたは合計リードタイム ・苦情またはバグに関するチケットの件数 ・売上債権回転日数 (DSO) などの物流指標 |
人事・人材指標 | ・社員定着率 ・離職率 ・従業員満足度 ・給与競争力 (SCR) |
営業指標 | ・獲得率 ・競合他社に奪われた契約件数 ・市場参入度 |
マーケティング指標 | ・クオリファイドリード (品質が保証されたリード) ・リードのコンバージョン率 ・SNS フォロワー数 ・デジタルコンテンツダウンロード数 ・メルマガのクリック率 (CTR) ・シェアオブボイス (SOV) |
すべてのタスクを KPI 化する必要はありません。目標達成に直結する、影響力の高い指標に絞ることが成功のコツです。
Asana のレポートダッシュボード機能で仕事を見える化する目指す目標とそれに至るための測定指標の決定が済んだら、KPI を設定します。KPI は数値化でき、具体的で、実行可能であることを忘れないようにしましょう。KPI を設定するときは「SMART (スマート)」の 5 つの要件と照らし合わせることがおすすめです。
SMART は、以下を表す略語です。
Specific (具体的)
Measurable (測定可能)
Achievable (達成可能)
Realistic (現実的)
Time-bound (期限がある)
KPI は、他の目標と同様、設定するだけで後は忘れてよいものではありません。進捗状況を追跡し、プロジェクトの関係者とリアルタイムで共有する方法を必ず定めましょう。
KPI を報告する頻度は、チームの仕事の速度によります。進捗が速いプロジェクトなら、全員が常に最新状況を把握できるよう、アップデートを毎週共有することを検討します。より長期の緩やかなペースのプロジェクトであれば、十分な情報量を共有できるようになるまで待てるよう、隔週または月次の報告を検討しましょう。
記事: 効果的なプロジェクトステータスレポートの書き方可能な場合は、仕事をマネジメントする場所と同じ場 (ツール) で進捗を追跡、共有しましょう。そうすることで、それぞれのメンバーの仕事が KPI にどのように寄与し、その結果、会社全体の目標にどのような影響が及んでいるのか、チーム全員が理解できます。
クラウド型ワークマネジメントソフトウェア Asana では、目標管理ソフトウェアを使用し、会社目標をその達成につながる仕事と結びつけています。「ゴール」を使えば、チームメンバーはプロジェクトに優先順位を付け、最も影響度が高い仕事を確実に完了できます。
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KPI を実際にビジネスの成果につなげるには、日々の運用やチームでの共有をどう行うかがカギになります。ここでは、KPI を実践的に活用するためのヒントを 5 つご紹介します。
KPI の数値だけでなく、「なぜその KPI を追うのか?」という背景や目的までしっかりと共有しましょう。目的が明確であれば、メンバーの納得感が高まり、自律的な行動につながります。
KPI が多すぎると、かえって焦点がぼやけてしまいます。追うべき指標は最も成果に直結するものに絞るのがポイントです。 目安としては、1 つのチームに対して 2〜3 個程度が理想です。
KPI は先行指標だけでも、遅行指標だけでも不十分です。行動と結果の両面を KPI として設定することで、進捗の早期発見と振り返りがしやすくなります。
KPI は環境や目標の変化に応じて見直すべきものです。「設定したから固定」ではなく、定期的に成果や課題を振り返りながら、指標の修正も検討しましょう。
KPI がチーム全体で見える化されていなければ、行動につながりません。リアルタイムに進捗が把握できる仕組みを作り、関係者全員が状況を共有できる状態を保つことが成功の近道です。
KPI の共有と可視化には Asana が効果的です。Asana なら、チームの数値目標をリアルタイムで追跡し、進捗を可視化できます。プロジェクトやタスクと指標を結びつけて、戦略目標の達成に直結する行動を生み出しましょう。
無料で Asana を試すKPI とは何かをより深く理解するために、SMART の原則に沿った具体例を複数の部門からご紹介します。数値や期限、目標とのつながりを明確にすることで、効果的な KPI 設計のヒントにしてください。
あなたがカスタマーサービスチームのメンバーで「全社の顧客解約率を減らす」という大きな目標に取り組んでいるとします。サポート品質を高めるため、まずは問い合わせ対応のスピード改善を目指します。
現状: 問い合わせ対応までに平均 14 時間かかっている
目標: 対応時間を 10 時間以内に短縮し、顧客満足度を向上させる
ここで考えられる KPI の例は「第 1 四半期末までに、平均チケット解決時間を 10 時間以内に短縮する」です。これだと「何を・いつまでに・どれだけ改善するか」が具体的で、定量的な測定も可能です。
営業チームが売上を拡大するには、新規契約の件数が重要な KPI になります。過去の実績をもとに、現実的で達成可能な目標値を設定しましょう。
現状: 月あたり 8 件の新規契約
目標: 安定的な売上成長に向けて、月 12 件まで引き上げる
具体的な KPI の例は「次の 3 か月間で、月あたりの新規契約数を 12 件に増加させる」が考えられます。このように設定することで、短期的な期間で目標値を設定し、チーム全体の営業活動を具体的な行動に落とし込むことができます。
新製品のプロモーションを控えている場合、リード獲得数は重要なマーケティング KPI になります。広告やキャンペーンの効果も測定可能です。
現状: 月 150 件のリードを獲得
目標: ローンチ成功のため、より多くのリードを集めたい
ここでは、KPI を「第 2 四半期末までに、月間リード獲得数を 200 件に引き上げる」と設定します。この KPI は、SNS 広告や SEO 施策など、具体的なマーケティング施策にひも付けて管理が可能です。
製品の品質は企業の信用に直結します。不良率の削減は製造業において代表的な KPI です。
現状: 製品の不良率が 3.5%
目標: 顧客満足度とコスト効率の向上を図るため、不良率を下げたい
この場合考えられる KPI は「来月末までに、不良率を 3.0% 以下に削減する」です。生産プロセスの見直しや、品質管理の強化によって改善が可能となります。
どの KPI も「目標値」「達成期限」「測定可能性」が明確に設定されており、SMART の法則を満たしています。こうした実践的な KPI は、チームの行動を明確化し、目標達成への確かな道筋をつくります。
KPI の設定方法で解説したとおり、KPI はたとえ適切に設定しても、正しく管理されなければその効果が発揮されません。それには進捗をリアルタイムで追跡し、見直しや修正が必要なケースがあればアクションを取らなければならないのです。ここでは、KPI を適切に管理し、結果的にパフォーマンスの向上につなげた成功事例をご紹介します。
デジタルアートやエンターテイメント事業を手がけるチームラボは、国内外の多様なプロジェクトを同時に進行させる中で、業務管理の効率化とチーム全体のコラボレーションを強化するためにクラウド型ワークマネジメントプラットフォーム Asana を導入しました。
チームラボが Asana で行った取り組みのひとつが、KPI の管理と追跡です。Asana のゴール機能を使って、チームの KPI 達成状況を可視化できる仕組みを整えました。具体的には、KPI を目標として設定した上で、カスタムフィールドを使ってタスクに KPI への影響度を数値で付加できるように設定。こうすることで、KPI の達成に向けたプロセスを定量的に管理できるようにしたのです。
チームラボでは他にも、OKR 管理やタスク管理でも Asana の機能を活用し、結果としてチーム全体のパフォーマンス改善という成果を上げました。詳しくはチームラボによる Asana 導入事例をご覧ください。
仕事を最大限効率化し、チームの生産性を上げるためには、Asana のプロジェクトマネジメント機能をお試しください。日々の業務と目標をつなげ、「誰が・何を・いつまでに行うのか」を可視化します。
KPI の意味とメリット、KGI や OKR との違い、設定方法を解説しました。KPI 指標は戦略目標と直結し、しかも数値化された指標です。明確な指標であることで、”やるべきこと” が可視化され、PDCA サイクルも回しやすくなります。組織の最終目標へ向かう道標として、効果的な KPI を設定しましょう。
ビジネスシーンにおける目標設定手法には、KPI の他にもさまざまな種類があります。KPI 指標がニーズに合わない場合には、別のフレームワークも試してみましょう。KGI、OKR、SMART な目標、短期目標の策定に関する Asana の記事をお読みください。